彼らの夏が終わる

 その後も、一輝たちは週に一度ほどのペースで練習試合を重ねていった。

 たいていはメイサがどこから見つけてくるのかわからない伝手で対戦相手を探してきたり、ときには顧問の灰田(はいだ)がふらりと顔を出して、


「週末、隣の市の地元チームとやっておいで」


 と言い出すこともある。


 近くの小学校のPTAバスケチームのおばちゃんたちは予想以上に強く、一輝たちはあっさり惨敗した。帰りには握りたてのおにぎりを持たせてもらい、それが驚くほどおいしかったうえ、「またおいで」と気さくに褒められ、どう反応していいかわからないまま帰ることもあった。

 練習試合は勝つこともあれば、負けることもあった。

 勝っても負けても、試合のあとは学校へ戻り、視聴覚室で動画を見直す。その度に練習が増えたり組み替えられたりしていた。

***

 ある日、一輝は試合の動画を見る際に、愛香の隣に腰を下ろした。


「どしたの?」

「どうもしない」

「寝るなら帰りな?」

「ち、ちげえよ」


 信用のなさに驚きながらも、自分がこれまで信用されるようなことをしてこなかったのだと気づき、余計に面食らった。

 動画が流れる間、一輝は画面ではなく愛香の手元をじっと見つめていた。

 細かな文字でびっしりと埋められたノート。そのノートが、すでに何冊目になるのかさえ一輝は知らなかった。

 愛香は試合の動画を見返しながら、各自の動きをノートへ静かに書き加えていく。

 一輝が愛香の向こう側に座るメイサへ目を向けると、その手元のノートにも似たような内容が並んでいた。しかし、書かれていることは少しずつ違っていた。


「ああ、目の前のことが書いてあるんだ」


 一輝は小さくつぶやき、改めて愛香とメイサへ視線を向けた。

 二人は試合中、自分たちの目の前で起きた出来事を書き留め、動画を見返しながら別の角度で見えていた動きや変化を追記していた。

 一輝は黙って画面へ視線を戻す。

 そして今度は相手のチームではなく、自分たちの動きに注目する。

 愛香の目には、自分たちはどう映っているだろう。

 試合中、自分には見えていたものと、見えていなかったものを一つひとつ探していく。