二回目の練習試合は、惨敗だった。
「ありがとうございました!」
一輝がそう言って頭を下げ、振り返ると、二年生三人は今にも噛みつきそうな険しい顔をしていた。愛香とメイサは口をへの字に結び、大雅は肩を落として悲しげな表情を浮かべている。
「ウケる」
つい一輝が吹き出すと、愛香に背中を叩かれる。
「ウケないよ、ばか」
「そだね。悔しいなあ」
体育館には試合を終えた選手たちの声が響き、熱気の残る空気が開け放たれた扉の外へと流れ出ていった。
「その割に嬉しそうなの、なんなん」
メイサは顔をしかめてそう言いながらも、ノートを持つ手とは反対の手で藤也の頭を優しく撫でていた。その様子がおかしくて、一輝はどうしても表情を引き締められなかった。
大雅がしょんぼりした顔のまま、メイサを覗き込む。
「三枝さん、俺も撫でて」
「は?」
今の「は?」は藤也のものだった。メイサは意にも介さず、そのまま受け流している。
「はいはい、着替えて帰ろうぜ。愛香、三枝、学校戻って動画見せて。撮ってるだろ」
「うん、撮ってる。帰ろう」
一輝も愛香に向かって手を上げかけたものの、結局そのまま下ろした。
学校へ戻ると、一行は視聴覚室で昼食をとりながら試合の動画を見返した。昼の日差しが窓から差し込み、静かな室内には映像の音声だけが淡々と流れている。
映像を見返すと、相手チームと自分たちとでは動きの質が明らかに違っていた。攻守の切り替えも、一歩目の速さも、画面越しでもはっきりと伝わってくる。
「切り返しはえー」
一輝が呟くと、大雅が息をはいた。
「しかも当たりが強いんだよ。何度吹っ飛ばされたか」
二年生三人も腕を組み、時折うなり声を漏らしながら食い入るように動画を見つめていた。
「手首がぐいって動くんすよね……」
「わかる。ぐいってな!」
「しかも姿勢が低いから、手元が見えにくくて……」
一輝が振り向くと、愛香とメイサは目を見開き、動画を食い入るように見つめながら何かを言い合っていた。
時折、手元のボールペンがさらさらと走り、ノートが次々とめくられていく。
「あそこ、一輝反応遅れてる」
「体幹もう少し鍛えよう。目で追えてても、身体が付いていってない」
「須藤くん、踏み込めてないね」
「股関節のストレッチ、増やさせようか」
一輝が二人のマネージャーを眺めていると、いつの間にか隣では大雅も同じように愛香とメイサへ視線を向けていた。
「ああやって俺らの練習が増えていくんだ」
「なあ……つーか、試合中の動画だけで体の固さとかわかるもんなん?」
「あの二人はそればっか見てるしな」
一輝はハッとして大雅を見た。
「なに?」
「あ、いや……こういうのなんて言うんだっけ。あれ、アハ体験」
「知らんけど、たぶんちげえよ」
愛香とメイサの手は止まることなく動き続け、ノートには次々と分析が書き込まれていく。
画面の中では試合がなおも流れ続け、視聴覚室には映像の音声と、時折交わされる分析の声だけが静かに響いていた。
***
「ありがとうございました!」
一輝がそう言って頭を下げ、振り返ると、二年生三人は今にも噛みつきそうな険しい顔をしていた。愛香とメイサは口をへの字に結び、大雅は肩を落として悲しげな表情を浮かべている。
「ウケる」
つい一輝が吹き出すと、愛香に背中を叩かれる。
「ウケないよ、ばか」
「そだね。悔しいなあ」
体育館には試合を終えた選手たちの声が響き、熱気の残る空気が開け放たれた扉の外へと流れ出ていった。
「その割に嬉しそうなの、なんなん」
メイサは顔をしかめてそう言いながらも、ノートを持つ手とは反対の手で藤也の頭を優しく撫でていた。その様子がおかしくて、一輝はどうしても表情を引き締められなかった。
大雅がしょんぼりした顔のまま、メイサを覗き込む。
「三枝さん、俺も撫でて」
「は?」
今の「は?」は藤也のものだった。メイサは意にも介さず、そのまま受け流している。
「はいはい、着替えて帰ろうぜ。愛香、三枝、学校戻って動画見せて。撮ってるだろ」
「うん、撮ってる。帰ろう」
一輝も愛香に向かって手を上げかけたものの、結局そのまま下ろした。
学校へ戻ると、一行は視聴覚室で昼食をとりながら試合の動画を見返した。昼の日差しが窓から差し込み、静かな室内には映像の音声だけが淡々と流れている。
映像を見返すと、相手チームと自分たちとでは動きの質が明らかに違っていた。攻守の切り替えも、一歩目の速さも、画面越しでもはっきりと伝わってくる。
「切り返しはえー」
一輝が呟くと、大雅が息をはいた。
「しかも当たりが強いんだよ。何度吹っ飛ばされたか」
二年生三人も腕を組み、時折うなり声を漏らしながら食い入るように動画を見つめていた。
「手首がぐいって動くんすよね……」
「わかる。ぐいってな!」
「しかも姿勢が低いから、手元が見えにくくて……」
一輝が振り向くと、愛香とメイサは目を見開き、動画を食い入るように見つめながら何かを言い合っていた。
時折、手元のボールペンがさらさらと走り、ノートが次々とめくられていく。
「あそこ、一輝反応遅れてる」
「体幹もう少し鍛えよう。目で追えてても、身体が付いていってない」
「須藤くん、踏み込めてないね」
「股関節のストレッチ、増やさせようか」
一輝が二人のマネージャーを眺めていると、いつの間にか隣では大雅も同じように愛香とメイサへ視線を向けていた。
「ああやって俺らの練習が増えていくんだ」
「なあ……つーか、試合中の動画だけで体の固さとかわかるもんなん?」
「あの二人はそればっか見てるしな」
一輝はハッとして大雅を見た。
「なに?」
「あ、いや……こういうのなんて言うんだっけ。あれ、アハ体験」
「知らんけど、たぶんちげえよ」
愛香とメイサの手は止まることなく動き続け、ノートには次々と分析が書き込まれていく。
画面の中では試合がなおも流れ続け、視聴覚室には映像の音声と、時折交わされる分析の声だけが静かに響いていた。
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