彼らの夏が終わる

 控室に着くと、メイサがどかっとベンチに座った。


「あーすっきりした」

三枝(さえぐさ)先輩、褒めて褒めて」

「藤也、一発目のシュート外したでしょ」

「うぐ」

「三枝さん、俺は初手、決めたよ」


 藤也が言葉に詰まる横で、大雅がニヤニヤしながらメイサの前へ進み出た。


「よくできました。撫でてあげようか?」

「えっ、おねが……い、いらねえし!」


 頭を下げかけた大雅を藤也がじろっと睨んで割って入った。

 一輝はその様子を笑いながら眺め、制服に着替えた。

 愛香はメイサから少し離れた席でノートに何かを書き込み、メイサは続けて海斗と翔を褒めていた。


「俺は?」


 一輝が何の気なしにメイサに聞くと、「うん」とやる気のない返事が返ってきた。


「ポイントガード、初めてだったんでしょ? 途中ちょっと日和ってたけど、よかったんじゃない?」

「……『日和ったら刺す』は声援じゃねえと思うわけよ」

「発破をかけたんだよ。声援はまなちゃんにかけてもらって」

「……これ以上愛香に甘えたら見捨てられないかな」

「本人に聞け」


 一輝は振り返ると、少しためらってから愛香の隣に腰を下ろした。


「……俺、ちょっとはマシになったかな」

「なった」


 愛香は顔を上げずに答えた。

 一輝は愛香の華奢な肩を見つめ、小さく目を細めた。


「そっか」


 一輝は静かに立ち上がり、荷物をまとめ始めた。


「三枝ー、このビデオってさ」

「ちょっと、乱暴! それ、サッカー部のなんだからさあ」

「それは知ってるけど」

「丁寧に扱ってよね」


 怒るメイサに大雅が笑った。


「むしろ三枝さんが俺らを丁寧に扱ってほしい」

「は?」


 低い声に、大雅の笑顔が引きつる。


白石(しらいし)、月曜からの朝練でランジ追加」

「らんじ?」

「こういうやつ」


 メイサは片足を前に出して、膝を曲げ、腰を落とした。


「……スクワットの足を前後に開くやつ? なんだよ、余裕じゃん」

「そう? 余裕なら後ろの足は椅子に乗せてやってね。体幹強化が足りてなさそうだから」

「余裕余裕……んあ」


 大雅は言われた通り、後ろに引いた足をベンチへ乗せて腰を落とし……そのまま見事にひっくり返った。


「え、なんこれ、難しくない?」

「余裕なんでしょ?」

「でも」

「余裕だよね、白石(しらいし)くん」

「……はい」


 メイサは大雅に笑顔を向けると、そのままビデオを片付け始める。


「まなちゃん、忘れ物ない?」

「大丈夫、帰ろうか。一輝はどうする?」

「……俺も愛香と学校行く。試合のビデオ見るんだろ?」

「なら俺らも行きます!」


 結局、全員で学校へ戻り、視聴覚室で昼食をとりながら練習試合のビデオを見返した。

 途中でメイサと藤也は席を立ち、それぞれの部活へ顔を出しに向かう。

***