彼らの夏が終わる

 放課後、バスケ部は視聴覚室へやってきた。愛香のスマホをプロジェクターにつなぎ、大学生同士の試合をスクリーンへ映し出す。

 メイサは愛香と並んで後方の席に座り、画面ではなく男子たちの表情や反応を見守っていた。


「ここのポイントガードの動き良かったな。全員攻めないで、ちゃんと周り見てて。まさに司令塔って感じ」


 愛香の前に座る一輝が、目を細めて言った。

 そのさらに前に座っていた大雅は、「マジか」とつぶやき、改めて画面へ目を向けた。


「本当だ。俺、四番の選手がガツガツ攻めてるとこしか見てなかったわ。いや、迫力すごかったんだよ」

「わかります。俺もこの選手……スモールフォワードかな。めっちゃ走ってるのにびっくりしました。足早いな……」

「わかる。全体的にガツガツ動いてるっつうか」


 前の方では海斗と翔が頷き合っていた。その隣に座っていた藤也が振り返る。


三枝(さえぐさ)先輩、あの背の高い人、ポジションなに?」

「あれはセンター。まさに背の高い選手のポジションだね。……私じゃなくて、まなちゃんか他の選手に聞いてよ。私だって付け焼き刃だから」

「すみません、つい」


 まったく悪びれた様子もなく謝ると、藤也は再び画面へ目を向ける。

 それから一時間ほどで観戦を終えると、メイサは頷き、手元のノートを愛香に見せた。


「まなちゃん、ポジション、これでどう?」

「……いいと思う」

「は?」


 大雅が声を上げた。


「待て待て、なんで今の流れでポジションの話になるんだよ」

「試合するなら、ポジション決めないといけないじゃん」

「そうだけどさ」


 淡々と言い切るメイサに、大雅は目を白黒させた。

 一輝が肩をすくめる。


「三枝、ポジション決めるために、俺らに感想聞いた?」

「そうだよ。試合をどう見てるのかを聞きたかった」

「で、どうだった?」


 二年生三人は慌てて立ち上がり、メイサと愛香の後ろへ回って二人の手元を覗き込んだ。

 藤也が「なるほど……なるほど?」と首を傾げた。


「俺がセンター? あのゴール前にいる、でっかい役やるの?」

「そう。でっかいんだから、でっかい役、よろしく」

「海斗くんはスモールフォワード。器用だからね。オールラウンダー向きだよ。頑張って走って」


 愛香が言うと、海斗は拳を握った。


「が、頑張ります!」

「俺シューティングガード……できますかね」


 自信なさそうな翔へ、メイサは笑顔を向けた。


「やるんだよ」

「……はい」

茶野(ちゃの)は器用だし小回りもきくけど体力がないから、そこさえなんとかなればどうとでもなるよ。サッカー部おいで」

「い、いきませんよ!」


 翔をからかい終えたメイサは、一輝と大雅へ目を向けた。大雅は不満そうな顔をし、一輝は困ったような表情を浮かべていた。

 大雅が先に口を開いた。


「三枝さん、なんで俺がパワーフォワード? そんなフィジカルないけど」

「まあ、フィジカルなら黒杉のほうがあるんだけどね」

「なら」

「あんたがいつも一番先に私に突っかかってくるでしょ」


 メイサに言われて、大雅は言葉に詰まった。


「誰よりも先に突っ込む。それが白石、あんたの役目」


 大雅は何度か瞬きをして、顔を上げた。


「……須藤(すどう)、この子俺にちょうだい」

「死んでも嫌です」


 大雅と藤也がにらみ合うのを無視して、メイサは大雅を見た。


「黒杉はポイントガード。司令塔。このチームは、あんたが引っ張るの」

「……愛香は、それでいいと思う?」

「思う」


 愛香は即答した。

 一輝は小さく頷く。


「わかった。やるよ、ポイントガード。つっても、今までずっとパワーフォワードだったから、いきなりできるかわかんねえけど」

「できるよ。一輝ならできる」


 そう言って、愛香は立ち上がった。


「じゃあ、ポジションも決まったし、練習練習。とりあえず走ろう。今見た通り、相手は運動量が多いからね。うちは交代選手もいないし、後半バテないようにしないと」


 一輝も愛香の後を追って立ち上がった。


「あの二人、さっさとくっつけばいいのに」

 メイサが呟くと、大雅が返事の代わりにため息をついた。

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