彼らの夏が終わる

 やがて、二学期が始まった。

 朝、愛香が家を出ると、ちょうど一輝(かずき)も自転車に跨がろうとしていた。


「一輝、おはよ」

「……はよ」

「なんでそんなに嫌そうなの?」

「嫌とかじゃなくて……ニヤけそうなのを堪えてる」


 愛香は苦笑をこぼし、自転車に跨るとのんびり走り出した。


「ニヤければいいのに」

「やだ。かっこ悪い」

「もっとかっこ悪いところ、全部知ってる」

「本当だよ……あ、大雅(たいが)

「おはよー」


 愛香と一輝は大雅の家の前で自転車を止めた。

 大雅はあくびをして、自転車を引っ張り出す。


「はよ。つーか、先行ってくれていいけど」

「何言ってんだよ。お前も行くんだよ」

「今、一輝のかっこ悪かったところベストテン始まるところだった」

「マジかよ」


 一輝がギョッとすると、大雅も顔をしかめた。


「止めろ、それ半分以上俺も含まれるだろうが」


 三人は縦一列に並び、朝の住宅街を抜けて学校へ向かった。

 学校の駐輪場に自転車を止めると、三人はゆっくりと校舎へ向かった。


「美琴ちゃん、楽しくやってるみたいだね」

「なんかな。海斗と翔が尻に敷かれてるっぽいけど、大丈夫かな……」


 大雅は顔をしかめて体育館へと顔を向けた。

 一輝は笑って少し前を歩く。


「大丈夫だろ。あの二人、俺にいびられても、三枝にしごかれても止めなかったんだから」

「自分で言うな。ま、あいつらが大丈夫なのは同意だけどさ」


 愛香は二人の後ろをのんびりと歩いていった。

 空は相変わらず青く澄んでいたが、その色は夏の頃よりもわずかに淡く見えた。

 頬をなでる風は、少し前までとは違って乾いた心地よさを帯びていた。

 白い雲がいくつも連なり、ゆっくりと青空を横切っていく。

 体育館からは、規則正しくボールの跳ねる音が絶え間なく響いていた。

 秋が始まろうとしていた。