彼らの夏が終わる

 一輝と大雅は肩を並べ、ボールの音が響く体育館へ足を踏み入れた。

 入口付近で汗を拭いていたバレー部の部長が、二人に気づいて顔を上げた。


「おつかれ。試合どうだった? 負けた?」

「負けた負けた」


 一輝が苦笑すると、周囲にいたバレー部員たちも一斉に二人へ顔を向けた。


「おつかれっした!」

「ありがと。そっちは?」

「来週から。やー、そっかあ。お前ら終わっちゃったかあ。赤江さん貸して」

「ダメ」


 一輝はすたすたと舞台のほうへ歩き、大雅ものんびりとその後に続いた。

 二人は舞台の縁にもたれ、肩を並べて体育館を見渡した。


「うーん、終わった」

「終わったなあ」


 体育館の半分では男子バレー部がいつもどおり練習を続けていた。窓も扉も開け放たれ、生ぬるい風が吹き込み、外ではセミがけたたましく鳴いている。朝と変わらず、空には雲一つない青空が広がっていた。


「これも見納めかあ」

「だなあ」


 大雅は力の抜けた声で答えた。


「負けた挙げ句に慰められて言い訳されて、本当にムカつくな」


 一輝がぽつりと言うと、大雅も同じように「だなあ」と返した。けれど、その声はさっきより少しだけ低かった。


「大雅」

「んー」

「悪かった。ごめん」

「いいよ。俺もだから」


 何についての謝罪なのか、二人はあえて口にしなかった。ただ肩を並べ、バレー部の練習と体育館、そして変わらず広がる夏の空を眺めていた。