並び始めて四十分程経ったところで、ようやく次に順番が回ってきた。
「汗かいちゃった」
小声で口にしてから繋いでいた手を緩めると、「俺も」と賢吾がはにかみながらゆっくりと手をほどいた。ふと、寒さを感じなくなっていることに気付いて、自分はどれだけの熱を生み出していたのかと恥ずかしくなる。
ふたりは店頭のメニューを見ながら、スープの量やトッピングなどを決めていく。辛さは無料の十段階と、それ以上の有料スパイスがある。子供も安心なマイルドから始まり、本格的な辛さまで選べる。一般的な中辛が三、四辺りで、常識的な辛党なら七から十を選ぶようだ。辛党というほど辛党ではないが、少し刺激も欲しい。ふたりで相談した結果、六にしてみようとなった。
やがて、手を繋いで出てきたカップルと入れ替わりで、中へと案内された。
店内は外観から想像していた通り、異国情緒漂う空間が広がっていた。照明が落とされ、東南アジア系の調度品や絵画が多数飾られている。案内されたテーブル席は半個室のように仕切られていて、周りを気にせずゆっくりと食事が楽しめそうだ。
注文を済ませて水を一口飲んだ瞬間、数日前の出来事が思い出された。酔ったふりをして賢吾にせがんで水を飲ませてもらったことだ。そうして、また頬が上気するのを感じたが、幸い店内のオレンジ色の照明のおかげで、気付かれずに済んだ。
意識を別のところに向けようと店内を見回すと、完全個室のように高い壁で囲われ、入り口が民族調の布で目隠しされている空間が二ヶ所あった。時折揺れる布にぼんやりと人影が映され、男女の笑い声が聞こえてくる。おそらく、カップル席ということだろう。
「絶対に今、同じこと考えましたよね?」
「え? ……かもね」
賢吾に意味ありげな視線を向けられ、動揺して視線が泳ぐ。
会社の後輩と個室は気まずいけれど、ラブラブのカップルなら、食事中にいちゃつくのはアリだろう。“見られてなんぼ”の時期があった過去を思い出す。逆に、あえて人の目を遮るということは、それ以上の何か――と、つい勝手な空想を繰り広げる。いつか、あの禁断の布の向こう側へ足を踏み入れることがあるのだろうか。そして、その相手は――
「汗かいちゃった」
小声で口にしてから繋いでいた手を緩めると、「俺も」と賢吾がはにかみながらゆっくりと手をほどいた。ふと、寒さを感じなくなっていることに気付いて、自分はどれだけの熱を生み出していたのかと恥ずかしくなる。
ふたりは店頭のメニューを見ながら、スープの量やトッピングなどを決めていく。辛さは無料の十段階と、それ以上の有料スパイスがある。子供も安心なマイルドから始まり、本格的な辛さまで選べる。一般的な中辛が三、四辺りで、常識的な辛党なら七から十を選ぶようだ。辛党というほど辛党ではないが、少し刺激も欲しい。ふたりで相談した結果、六にしてみようとなった。
やがて、手を繋いで出てきたカップルと入れ替わりで、中へと案内された。
店内は外観から想像していた通り、異国情緒漂う空間が広がっていた。照明が落とされ、東南アジア系の調度品や絵画が多数飾られている。案内されたテーブル席は半個室のように仕切られていて、周りを気にせずゆっくりと食事が楽しめそうだ。
注文を済ませて水を一口飲んだ瞬間、数日前の出来事が思い出された。酔ったふりをして賢吾にせがんで水を飲ませてもらったことだ。そうして、また頬が上気するのを感じたが、幸い店内のオレンジ色の照明のおかげで、気付かれずに済んだ。
意識を別のところに向けようと店内を見回すと、完全個室のように高い壁で囲われ、入り口が民族調の布で目隠しされている空間が二ヶ所あった。時折揺れる布にぼんやりと人影が映され、男女の笑い声が聞こえてくる。おそらく、カップル席ということだろう。
「絶対に今、同じこと考えましたよね?」
「え? ……かもね」
賢吾に意味ありげな視線を向けられ、動揺して視線が泳ぐ。
会社の後輩と個室は気まずいけれど、ラブラブのカップルなら、食事中にいちゃつくのはアリだろう。“見られてなんぼ”の時期があった過去を思い出す。逆に、あえて人の目を遮るということは、それ以上の何か――と、つい勝手な空想を繰り広げる。いつか、あの禁断の布の向こう側へ足を踏み入れることがあるのだろうか。そして、その相手は――



