街路樹の隙間から差し込む朝日が、スポットライトのように結衣を照らした。歩道を行き交う人々と目が合うと全てを見透かされているような気分になり、思わず肩を竦める。
どんな顔をして会えばいいのだろう。こういう時は謝るべきなのだろうか。酔っていたのは自分だけで、新田は素面だったけれど、どんなタイミングときっかけで、どちらから誘ったのだろうか。
そんなことを考えているうちに会社が見えてきた。後ろから駆け寄る足音が真横で止まった瞬間、昨夜の甘美で官能的なオリエンタル調の香りが漂った。
「おはようございます」
振り向くと、新田の爽やかな笑顔があった。
「お、おはよう」
動揺を必死に隠して返したが、後に言葉が続かない。
「先輩って、いつもあんな感じなんですか?」
声のボリュームを落とした新田が、意味ありげな視線を向けてきた。
「あー、いやぁ……昨日はちょっと飲み過ぎちゃったかな」
「ですよね」
新田が言った“あんな感じ”がどんな感じなのかさっぱりわからず、苦笑いするしかなかった。
「先輩」
「はひ?」
隠しきれない動揺が、喉から漏れた。
「リボン、ほどけてますよ」
胸元を見ていた新田の手が伸びてきた。
そんな風にして、昨夜はブラウスのボタンを――
「はい、これで大丈夫です」
新田はほどけていたブラウスのボウタイを素早く蝶に結んでくれた。
「あ、ありがとう」
「いえ。俺、コンビニ寄ってからすぐ行きますね」
弾けるような笑顔でそう言うと、新田は軽やかな足取りでコンビニに入っていった。
誰にも知られていないはずなのに、会社に着くと何故かそわそわした。
「結衣ちゃん、おはよう!」
昨夜一緒に飲んだ同僚で飲み友達の木村雅哉ことまさやんの声がフロアに響く。
「まさやん、おはよー」
「昨日は無事に帰れた?」
飲み会翌日の常套句だ。
「あ、う、うん。まあ……」
言いよどんだ自分が滑稽で、結衣はまたもや苦笑いを浮かべた。
「木村先輩、おはようございます。昨日は俺がちゃんとマンション前まで黒見先輩をお送りしましたよ」
振り返ると、いつの間にかすぐ後ろにいた新田が、まさやんに笑顔を向けていた。
「そっかそっか、それなら良かった。飲み会の帰りはいつも結衣ちゃんひとりになるから俺らも心配なんだけど、新田が一緒だと安心だな」
「はい、任せてください」
新田のスマートなフォローに感謝しながら、結衣はそそくさと自分の席へと向かった。あの場で雑談を続けていたら、せっかくのフォローを台無しにしてしまいそうな気がした。
どんな顔をして会えばいいのだろう。こういう時は謝るべきなのだろうか。酔っていたのは自分だけで、新田は素面だったけれど、どんなタイミングときっかけで、どちらから誘ったのだろうか。
そんなことを考えているうちに会社が見えてきた。後ろから駆け寄る足音が真横で止まった瞬間、昨夜の甘美で官能的なオリエンタル調の香りが漂った。
「おはようございます」
振り向くと、新田の爽やかな笑顔があった。
「お、おはよう」
動揺を必死に隠して返したが、後に言葉が続かない。
「先輩って、いつもあんな感じなんですか?」
声のボリュームを落とした新田が、意味ありげな視線を向けてきた。
「あー、いやぁ……昨日はちょっと飲み過ぎちゃったかな」
「ですよね」
新田が言った“あんな感じ”がどんな感じなのかさっぱりわからず、苦笑いするしかなかった。
「先輩」
「はひ?」
隠しきれない動揺が、喉から漏れた。
「リボン、ほどけてますよ」
胸元を見ていた新田の手が伸びてきた。
そんな風にして、昨夜はブラウスのボタンを――
「はい、これで大丈夫です」
新田はほどけていたブラウスのボウタイを素早く蝶に結んでくれた。
「あ、ありがとう」
「いえ。俺、コンビニ寄ってからすぐ行きますね」
弾けるような笑顔でそう言うと、新田は軽やかな足取りでコンビニに入っていった。
誰にも知られていないはずなのに、会社に着くと何故かそわそわした。
「結衣ちゃん、おはよう!」
昨夜一緒に飲んだ同僚で飲み友達の木村雅哉ことまさやんの声がフロアに響く。
「まさやん、おはよー」
「昨日は無事に帰れた?」
飲み会翌日の常套句だ。
「あ、う、うん。まあ……」
言いよどんだ自分が滑稽で、結衣はまたもや苦笑いを浮かべた。
「木村先輩、おはようございます。昨日は俺がちゃんとマンション前まで黒見先輩をお送りしましたよ」
振り返ると、いつの間にかすぐ後ろにいた新田が、まさやんに笑顔を向けていた。
「そっかそっか、それなら良かった。飲み会の帰りはいつも結衣ちゃんひとりになるから俺らも心配なんだけど、新田が一緒だと安心だな」
「はい、任せてください」
新田のスマートなフォローに感謝しながら、結衣はそそくさと自分の席へと向かった。あの場で雑談を続けていたら、せっかくのフォローを台無しにしてしまいそうな気がした。



