乾杯はふたりだけの秘密

 体を張った策略だった。新田を食事に誘った時点で、何があっても構わないと覚悟を決めていた。一度も二度も同じだと、半ばやけくそになっていたのかもしれない。そこまでしてでも、新田の気持ちを確かめたかった。
 体を重ねてから始まる恋愛もあるということが理解できないくらいに若くはないし、純粋というわけでもない。実際、新田と関係を持ってから、彼のことを意識してしまっている。
 それでも、いざベッドに運ばれると、怖じ気付いてしまった。知りたい気持ちと後悔が半々に押し寄せた。体だけの関係には絶対になりたくはなかった。心のどこかで、新田はそんな人間ではないと信じていた。
 結果、想像していたようなことは起きなかった。結衣はそのことにほっとしているのか、がっかりしているのか、自分でもよくわからなかった。ただ、思いがけない新田の行動に心を大きく揺さぶられたのは事実だった。
 額に触れたものは唇だったとわかる。微かな吐息が肌を撫でた。まるで愛おしいものに触れるような、優しいキスだった。
 そうして、結衣は直感で気付いた。
 あの夜は何もなかった――と。