振ったはずの元カレが、今でも私を離してくれません。

少しの沈黙。

でもこの沈黙が嫌ではなかった。

昔もこういう時間があった気がする。

何も話さなくても、隣にいるだけでよかった時間。


人の流れから少し外れたところ。

校舎の横にある静かな通路まで来ると、さっきまでの賑やかな声が嘘みたいに遠くなった。

「ここなら大丈夫だと思う」

篠宮先輩が足を止めて振り返る。

「……うん」

私は小さく頷いた。

返事をするだけで精一杯だった。

二人きりになると、急に距離を意識してしまう。

近いはずなのに、どこか遠く感じる。

その曖昧な距離が、胸をぎゅっと締めつけた。

「澪ちゃん」

優しく名前を呼ばれる。

それだけで肩が小さく震えた。