振ったはずの元カレが、今でも私を離してくれません。


「澪ちゃん」

文化祭のざわめきの中で、名前を呼ばれた。

振り向くと、少し離れたところに篠宮先輩が立っていた。

人混みの中なのに、その声だけやけにまっすぐ届く。

「……はい」

心臓が一瞬跳ねる。

篠宮先輩は少しだけ周りを見て、それから小さく手招きした。

「話せそう?」

その一言だけで、逃げられない気がした。

「……はい」

私は咲に事情を説明して、篠宮先輩の元へ向かう。