振ったはずの元カレが、今でも私を離してくれません。


人の流れが少しずつ戻っていく。

さっきまで止まっていたみたいだったのに、周りは何事もなかったように動き続けている。

でも私たちだけが、その場に取り残されたままだった。

「……久しぶりだね」

篠宮先輩が小さく言う。


「はいっ……」

それしか返せない。

言いたいことはあるのに。

頭の中はぐちゃぐちゃなのに。

何も出てこない。

「澪ちゃん」

名前を呼ばれて、肩が少し跳ねる。

「……はい?」

「今日、前と髪型違うね。可愛い。」

その一言に、胸が一瞬だけ熱くなる。

ずるい。

そんな普通の顔で、そんなこと言わないで。

「ひ、篠宮先輩……」

言いかけて、途中で止まる。