振ったはずの元カレが、今でも私を離してくれません。

「……篠宮、先輩」

ようやく出た声は、自分でも驚くくらい小さかった。

でも、その名前はちゃんと届いた気がした。


光くんの表情が少しだけ変わる。

まるで、時間が止まったみたいに。

文化祭の喧騒の中で。

そこだけが、切り取られたみたいに静かだった。


人混みの中。

一瞬だけ、世界が静かになった気がした。

目の前にいるのは——

篠宮先輩。

2年ぶりに再会して。

そして、数日前にカラオケでまた会った人。

なのに今は、なぜかそれ以上に遠く感じた。