「逃げんなよ。」
その一言が、やけに重かった。
俺は少しだけ黙ってから、短く答える。
「……最初から逃げる気ねぇよ。」
そう言いながら。
本当は、少しだけ怖かった。
また会ったら。
また、あの笑顔を見たら。
俺はちゃんと——耐えられるのか。
それでも。
ただもう一度だけ、会いたいと思ってしまう自分がいる。
そして胸の奥はずっとざわついたままだった。
(……澪ちゃん。)
(高校でも、モテるんだろうな。)
ふと、そんな考えがよぎる。
中学の頃から、人見知りなのに目を引くタイプだった。
気づいたら、周りに人が増えてる。
ああいうのを“無自覚でモテる”って言うんだろうな。
「……は。」
小さく笑いかけて、すぐ消える。
笑える状況じゃないのに笑えてくる。
(俺今からでも遅くないかな。)
その考えが浮かんだ瞬間、また足が止まりそうになった。


