振ったはずの元カレが、今でも私を離してくれません。


“出会い”。

(……違う。)

俺は、違う。

そう言いかけて、やめた。

説明しても、誰にも分からない。

俺が見たいのは、ただ一人だけだなんて。

「光ー。」

後ろから樹の声。

「なんだよ。」

「お前、また足止まってた。」

「別に。」

「また東高のこと考えてたろ。」

「……。」

否定できないのが腹立つ。

樹は小さく笑う。

「分かりやすすぎ。」

「うるさい。」

歩き出す。

廊下の窓から見える夕焼けが、やけに赤かった。

その色が、なぜか澪ちゃんの笑った顔と重なる。

「なぁ光。」

樹が少しだけ真面目な声で言う。

「ん。」

「今回さ。」

「……。」

「ちゃんと行けよ。」

足が止まりかける。

「何を。」

「分かってんだろ。」

樹の視線がまっすぐ刺さる。