振ったはずの元カレが、今でも私を離してくれません。


私は——

優しい篠宮先輩を一方的に振ったのに。

「またその笑顔見られて嬉しい。」

その言葉に、息を呑む。

返事なんてできない。

心臓がうるさくて、何も考えられなかった。

「……戻ろっか。」

光くんがいつもの優しい笑顔で言う。

「……はい。」

私は小さく頷くことしかできなかった。

二人並んで歩き出す。

カラオケルームから漏れる賑やかな歌声が、少しずつ近づいてくる。

だけど今は、その音さえ遠く感じた。

隣を歩く光くんとの距離だけが、やけにはっきりと感じられた。