私は何も言えなかった。
言えるはずがなかった。
嬉しいなんて思っちゃいけない。
期待しちゃいけない。
そう思っているのに——。
「澪ちゃん、俺は。」
光くんが何かを言いかけた、その時。
「光ーー!」
樹の声が廊下に響く。
「どこ行ったー!」
光くんは苦笑いを浮かべる。
「……やば、怒られる。」
「ふふっ。」
思わず笑みがこぼれる。
その瞬間だった。
光くんが目を丸くして、じっと私を見つめた。
「……笑った。」
「え?」
「久しぶりに見た。」
優しく細められた瞳が、まっすぐ私を映している。
「澪ちゃん、もっと可愛くなったね。」
「……っ!」
一気に顔が熱くなる。
「な、何言ってるんですか……。」
慌てて目を逸らすと、光くんはくすっと笑った。
「でも。」
その一言で、もう一度視線が合う。
「その笑顔は、昔のままだ。」
胸がぎゅっと締めつけられる。
そんな顔で笑わないで。
そんな優しい声で名前を呼ばないで。


