振ったはずの元カレが、今でも私を離してくれません。


そう自分に言い聞かせて、お手洗いを出た。

「……!」

出口を曲がった瞬間。

壁にもたれかかるように立つ人影が目に入る。

黒いパーカー。

見慣れた横顔。

「篠宮……先輩。」

名前を呼ぶと、その人はゆっくり顔を上げた。

「澪ちゃん。」

その優しい声に、胸がきゅっと苦しくなる。

「……。」

沈黙。

何を話せばいいか分からない。

2年ぶり。

話したいことなんてたくさんあるはずなのに。

何一つ言葉にならない。

「少しだけ。」

光くんが静かに口を開く。

「話せたりしない?」

私は小さく頷いた。

「……はい。」

廊下には誰もいない。