「澪ちゃん、はいこれ。」
澪ちゃんがゆっくり顔を上げる。
「……え?」
「カルピスね。」
中学の頃。
一緒にコンビニへ行くと、澪ちゃんは決まってカルピスを選んでいた。
『光くんも飲む?』
そう言って笑っていた姿を、今でも覚えている。
「……あ、ありがとうございます、篠宮先輩。」
「……。」
その一言に、胸が締めつけられる。
“光くん”じゃない。
“篠宮先輩”。
たったそれだけの違い。
それだけなのに。
2年間という時間が、一気に現実になった気がした。
あの頃は当たり前のように呼んでくれていた名前。
『光くん。』
あの呼び方が、今はもう聞けない。
それもそうか、俺はもう
澪ちゃんにとって”特別な存在”じゃない。
ただの先輩。
それを思い知らされるには、その呼び方だけで十分だった。


