振ったはずの元カレが、今でも私を離してくれません。


水族館のときは横だったから、余計に新鮮だった。

「澪ちゃん、何にする?」

メニューを覗き込みながら光くんが聞く。

「えっと……これにします」

指をさすと、光くんはすぐに頷いた。

「じゃあそれにしよ」

迷いがない。

本当にこういうところ、まっすぐだ。

注文を終えて、少しだけ静かな時間が流れる。

カップが届くまでの間、何も話さないのに気まずくない。

むしろ少し心地いい。

でも、その“静かさ”が逆に心臓を浮かせる。

「澪ちゃん」

「はい」

呼ばれて顔を上げると、光くんがこちらを見ていた。

「今日もさ」

「……はい」

少しだけ間。

「来てくれて、ほんとに嬉しい」

その言葉は、何度目か分からない。

でもそのたびに、少しずつ重さが違う。