振ったはずの元カレが、今でも私を離してくれません。


「澪。」

お母さんが顔を覗かせた。

「あら。」

その一言に振り返る。

「すごく可愛い。」

「……ほんと?」

「うん。」

お母さんは優しく笑う。

「いつもも可愛いけど、今日はもっと可愛い。」

「……。」

照れくさくて、思わず笑ってしまう。

「そんなに頑張るなんて。」

「やっぱり大事な人なのね。」

「もう、お母さん!」

恥ずかしくて顔を真っ赤にすると、お母さんは楽しそうに笑った。

「行ってらっしゃい。」

「……行ってきます。」

家を出ると、秋の風がふわりと髪を揺らした。

スマホを見る。

待ち合わせは午前十時。

まだ九時二十分。

少し早いけど、遅れるよりはいい。

そう思いながら駅へ向かった。

日曜日の駅前は思っていたより人が多い。