各駅停車のラブソング~只今絶賛、片思い中。~

「今から死ぬなら、その命、私に3日間だけくれない?」
深夜の誰もいない駅のホーム。
線路に飛び降りようとした僕の腕を掴んだのは、白いワンピースを着た見知らぬ少女だった。
彼女の名前は、ひかり。
僕と同じ17歳。そして、心臓の病気で「あと3日の命」だと医者に宣告されたばかりの、病院を抜け出してきた迷子。
生きることに絶望し、自らレールを外れようとしていた僕。
生きたくても生きられない、レールの終着駅が見えている彼女。
最悪で、運命的な出会いだった。
「ねえ、海に行こうよ。各駅停車でのんびりとさ」

翌朝、ひかりは無邪気に笑って僕の手を引いた。
ガタゴトと揺れる車内、窓の外に広がる青い空、初めて食べる駅弁。
ひかりと過ごす時間は、昨日まで灰色だった僕の世界を、鮮やかな色で塗り替えていく。

2日目の夜、ホテルの屋上で星を見上げながら、ひかりがポツリと呟いた。
「私ね、もっと生きて、誰かと恋をしてみたかったな」
愛おしくて、苦しい。
彼女の細い肩を抱きしめながら、僕は生まれて初めて「生きたい」と思った。
いや、彼女を生かしたいと、神様に祈った。
そして、3日目の夕暮れ。出会ったあの駅のホーム。
ひかりの身体は、すでに冷たくなり始めていた。僕の胸に寄り添う彼女の呼吸が、だんだんと浅くなっていく。
「私、恋ができたよ。……君に出会えて、よかった」
消え入るような声で微笑むひかり。
僕の最初で最後の恋。
余命3日の彼女への、一生届かない片思い。
ガタゴトと入線してきた電車の光が、彼女の涙を優しく照らしていた。