幼馴染の麗奈の隣は、昔から俺の指定席だった。
保育園の砂場でも、小学校の通学路でも、俺たちはいつも一緒だった。
だけど、高校2年の冬。麗奈の隣には、俺ではない男が立つようになった。
サッカー部のエースで、誰もが認めるイケメンの幹太。
麗奈が幹太と付き合い始めてから、俺と麗奈の距離は、急行列車に追い抜かれる各駅停車みたいに、みるみる離れていった。
「陸都(りくと)ー! 待ってよ!」
ある雨の日の放課後。
誰もいない駅のホームで電車を待っていると、濡れた髪を気にもせず、麗奈が走ってきた。
「麗奈? どうしたんだよ、幹太は?」
「幹太は……部活。それに、最近なんか上手くいってなくて……」
麗奈は俯き、自分のローファーの先を見つめている。いつもの元気な笑顔はない。
そんな顔をさせるなら、俺が、俺だったら絶対に――。
喉まで出かかった言葉を、私は必死に飲み込んだ。
麗奈にとって俺は、ただの都合のいい幼馴染だ。これ以上踏み込んじゃいけない。
「……そっか。まぁ、幹太もお前に甘えてるだけだろ。すぐ元通りになるって」
わざとぶっきらぼうに言って、私は入線してきた電車のドアへと一歩を踏み出した。
その時、後ろからブレザーの袖をぐいっと引っ張られた。
「……よくない。元通りになんて、ならなくていいの」
振り返ると、麗奈の瞳に涙がたまっていた。
「幹太のことは、ちゃんと好き。だけど……だけど私、陸都のことも、好きなの……っ。陸都が遠くに行っちゃいそうで、最近ずっと苦しくて……!」
土砂降りの雨の音に消されそうな、小さな、でも確かな告白。
ガタゴトと音を立ててドアが閉まる。私たちは電車に乗ることも忘れて、ただ雨のホームで立ち尽くしていた。
二人の人を同時に好きになってしまった麗奈の、泣き出しそうな片思い。
そして、そんな彼女をずっと待ち続けていた、私の引き返せない片思い。
交わってはいけない線路が、静かに火花を散らし始めていた。
保育園の砂場でも、小学校の通学路でも、俺たちはいつも一緒だった。
だけど、高校2年の冬。麗奈の隣には、俺ではない男が立つようになった。
サッカー部のエースで、誰もが認めるイケメンの幹太。
麗奈が幹太と付き合い始めてから、俺と麗奈の距離は、急行列車に追い抜かれる各駅停車みたいに、みるみる離れていった。
「陸都(りくと)ー! 待ってよ!」
ある雨の日の放課後。
誰もいない駅のホームで電車を待っていると、濡れた髪を気にもせず、麗奈が走ってきた。
「麗奈? どうしたんだよ、幹太は?」
「幹太は……部活。それに、最近なんか上手くいってなくて……」
麗奈は俯き、自分のローファーの先を見つめている。いつもの元気な笑顔はない。
そんな顔をさせるなら、俺が、俺だったら絶対に――。
喉まで出かかった言葉を、私は必死に飲み込んだ。
麗奈にとって俺は、ただの都合のいい幼馴染だ。これ以上踏み込んじゃいけない。
「……そっか。まぁ、幹太もお前に甘えてるだけだろ。すぐ元通りになるって」
わざとぶっきらぼうに言って、私は入線してきた電車のドアへと一歩を踏み出した。
その時、後ろからブレザーの袖をぐいっと引っ張られた。
「……よくない。元通りになんて、ならなくていいの」
振り返ると、麗奈の瞳に涙がたまっていた。
「幹太のことは、ちゃんと好き。だけど……だけど私、陸都のことも、好きなの……っ。陸都が遠くに行っちゃいそうで、最近ずっと苦しくて……!」
土砂降りの雨の音に消されそうな、小さな、でも確かな告白。
ガタゴトと音を立ててドアが閉まる。私たちは電車に乗ることも忘れて、ただ雨のホームで立ち尽くしていた。
二人の人を同時に好きになってしまった麗奈の、泣き出しそうな片思い。
そして、そんな彼女をずっと待ち続けていた、私の引き返せない片思い。
交わってはいけない線路が、静かに火花を散らし始めていた。



