「ねえ、いつまでその難しい顔してるの?」
自宅のリビング。
パソコンに向かって仕事の資料を読んでいた私の背後から、低い、心地のいい声が降ってきた。
気がつけば、婚約者のハルが私の肩に顎を乗せ、後ろからすっぽりと抱きすくめるように腕を回している。
「あ、ごめん。あと少しでこの資料読み終わるから……」
「だめ。もう22時。僕のこと、放ったらかしにしすぎ」
ハルはふいっと私の顔を覗き込むと、ふわりと甘い無邪気な笑顔を見せた。
外では仕事もできて、周囲からも頼られる大人の男の人なのに、私の前でだけ、時折こうしてずるいくらいに甘えてくる。
出会った頃は、彼への片思いが各駅停車みたいに少しずつしか進まなくて、毎日やきもきしていたのが嘘みたいだ。
今はもう、薬指にお揃いの指輪が光っている。
「……ハル、ちょっと近いよ」
「遠くする理由、ないでしょ。僕たち、もうすぐ結婚するんだから」
ハルの長い指先が、私の前髪を優しく払い、そのまま熱を持った指先が頬を滑り落ちていく。
彼の琥珀色の瞳が、いつもより深く、色を帯びて私を捉えた。
「ちゃんと、こっち見て」
囁くような声とともに、ハルの唇が私の耳元をかすめ、首筋に深く触れる。
いつもは優しい彼が、こういう時だけは、私を逃がさないと言わんばかりに強引に、そしてひどく甘く求めてくる。
そのギャップに、私の心臓はいつだって特急列車並みのスピードで暴れだしてしまう。
「資料より、僕のほうが大事でしょ?」
視線で、体温で、何度も確かめるように重ねられるキス。
窓の外、遠くを走る終電の音が静かに響く中、私たちは溶け合うような甘い夜のレールへと、ゆっくりと踏み出していった。
自宅のリビング。
パソコンに向かって仕事の資料を読んでいた私の背後から、低い、心地のいい声が降ってきた。
気がつけば、婚約者のハルが私の肩に顎を乗せ、後ろからすっぽりと抱きすくめるように腕を回している。
「あ、ごめん。あと少しでこの資料読み終わるから……」
「だめ。もう22時。僕のこと、放ったらかしにしすぎ」
ハルはふいっと私の顔を覗き込むと、ふわりと甘い無邪気な笑顔を見せた。
外では仕事もできて、周囲からも頼られる大人の男の人なのに、私の前でだけ、時折こうしてずるいくらいに甘えてくる。
出会った頃は、彼への片思いが各駅停車みたいに少しずつしか進まなくて、毎日やきもきしていたのが嘘みたいだ。
今はもう、薬指にお揃いの指輪が光っている。
「……ハル、ちょっと近いよ」
「遠くする理由、ないでしょ。僕たち、もうすぐ結婚するんだから」
ハルの長い指先が、私の前髪を優しく払い、そのまま熱を持った指先が頬を滑り落ちていく。
彼の琥珀色の瞳が、いつもより深く、色を帯びて私を捉えた。
「ちゃんと、こっち見て」
囁くような声とともに、ハルの唇が私の耳元をかすめ、首筋に深く触れる。
いつもは優しい彼が、こういう時だけは、私を逃がさないと言わんばかりに強引に、そしてひどく甘く求めてくる。
そのギャップに、私の心臓はいつだって特急列車並みのスピードで暴れだしてしまう。
「資料より、僕のほうが大事でしょ?」
視線で、体温で、何度も確かめるように重ねられるキス。
窓の外、遠くを走る終電の音が静かに響く中、私たちは溶け合うような甘い夜のレールへと、ゆっくりと踏み出していった。



