田中里奈21歳、全て忘れてパリピになりたい。

 里奈が目を開けると知らない天井、知らない部屋。

 ベットや周りのインテリアを見るに、完全に男の寝室だと理解した。

 すぐに自分の服や鞄を確認するが何も変わったところはない。

 変わったところは……

 勢いよく首筋を抑える里奈。
 昨日の夜の記憶がフラッシュバックする。

「あ……あわ……あわぁ……」

 居た堪れず変な言葉を口走る。

「ひぇぇぇぇ」

 布団をかぶって感情を誤魔化そうと隠れる。
 その声に気づいた千隼がコンコンと部屋の扉をノックした。

「里奈?変な声聞こえたけど大丈夫?」

 千隼の声に昨日の言葉を思い出して変に緊張する。

「だ、ダダ大丈夫です!」

「だだだ……?」

 扉の向こうで千隼が笑っているのが伝わってくる。

 恥ずかしい。恥ずかしすぎる!

「昨日、あの後コンビニで買えるものは買ってきたんだ。歯ブラシとか着替えとか……流石に下着は恥ずかしくて、ごめん」

 申し訳なさそうに話す千隼に、「むしろこちらが迷惑をかけて申し訳ないです!」と焦ってフォローする。

 「とりあえず、出て来られそうなら出ておいで。リビングで待ってるよ」

 リビング……。はぁぁぁ、と1人大きく静かに息を吐く。

 酒を飲みすぎてこんな失態、ありえない。ありえなさすぎる。

 激しく後悔の念に駆られながらも軽く髪型と衣服を整え、意を決して寝室をでた。


「おはよう」

 綺麗でシンプルなリビングではラフなスエットに身を包んだ千隼がマグカップを持ってソファーに座っていた。

「お、おはようございます……」

「よく寝られた?」

「それはもう……フカフカのベットでよく眠れました……」

 千隼はマグカップをローテーブルに置いて立ち上がり、里奈に近づく。

「そりゃあれだけ酒飲んだらよく眠れるだろうね?」

 千隼の素敵な笑顔が今は怖く見えて顔を逸らす。
 
「男にまでお持ち帰りされちゃって、ね?」

 何も言えない。言い返す言葉もない。

「もうあんなにお酒飲みません……」

 里奈の反省した姿に千隼は優しく頭を撫でる。

「絶対、約束ね。飲みたいなら俺と2人で飲んで」

「2人……」

 
 昨日の千隼の言葉を思い出す。
 
 ——『俺は、里奈が好きだから、俺の前で無防備にならないで。』

 ——『次は我慢できる自信、ないから』

 里奈の顔は真っ赤に染まる。


 あ、あの言葉ってこ、告白だよね?
 千隼さんは私のことが恋愛的に好きってことで……


 急に千隼と目を合わせるのが恥ずかしくて顔を隠す。

 その反応に気付いた千隼はクスッと笑い気付いていないふりをして里奈に詰め寄った。

「里奈?どうしたの?何か思い出した?」

 ゆっくりと里奈を壁に追い詰める千隼。

「あ……その、昨日、千隼さんが私のことをす、好きって」

「千隼」

「え」

「ち は や」

 昨日みたいにそう呼んで欲しいと千隼は里奈に言う。

「千隼……」

「うん、そう呼んで。あと記憶は合ってるよ」

「やっぱり私の記憶違いじゃな——」

 千隼は里奈を昨日のように壁際に追い詰める。


「好きだよ、里奈。これからは遠慮せずどんどん攻めるから」

 千隼の本気の言葉にドキドキが止まらない。

 今にもキスできそうなくらい、顔が近づく。

「……しないよ。里奈が俺を好きになってくれるまでは」

 里奈の顎にそっと触れる。

「でも、里奈が俺を好きになったその時は。もう我慢しないから」




 元カレに裏切られて傷心中だった私がイケメン居酒屋店員とこんな関係になるなんて想像もしていなかった。


 ぐいぐい攻められた里奈は千隼を好きになり、付き合ってからも千隼に溺愛されて甘やかされ。
 
 甘すぎるくらいの甘い2人のお話。

 だけどその話はまた、今度。


 ——完——