その後は様々な領地を転々とするが同じように追い出されるオルディスの姿をいくつも目にした。
傭兵や私兵といった立場で帝国リシアで名を上げようとしているオルディスだったが、景色が変わる度に圧力を受け追い出される。そして同じことを重ねるごとにオルディスの高潔な精神が擦り減っているように見えた。
最後に言葉を交わした時の紳士的な騎士の姿は薄れ、擦れきっており、追い出される際も揉めている姿が目立つようになる。
まるで人の転落を見せられているようで、エルディーテは喉の奥に固い石が詰まったような閉塞感を感じていた。
「――今度はこの貴族を暗殺してくれないか」
そしてついに、オルディスは一線を越えた。
大義でなく個人の利益や恨みを晴らすための依頼を受けるようになったのだ。
そういう依頼でしか食いつないでいけないのだろう。
その頃のオルディスは既にエルディーテの年齢を超えていて、瞳には輝きがなく覇気の無い声音で呟くように話し、何もかもどうでもいいといった感じだった。
相変わらずエルディーテの姿はオルディスの目に映ることは無い。
以前二回だけ話すことが出来たが、あれは奇跡だったのだろうか。
そんな風に思っていたころ、オルディスに暗殺を依頼する人物の口からエルディーテの家名が挙がった。
「グラウス家の私兵に紛れてくれないか?」
「……今度の標的はユーク・グラウス……?誰が依頼を?」
「お前が知る必要はない」
オルディスに依頼する男は仮面をつけており、彼らは夜間に取引をする。
成功報酬を渡す時に新たな命令をしてゆく依頼人の正体はエルディーテには見当もつかない。
このところオルディスの暗殺者としての一面を見せられ続けており、エルディーテ自身も少し疲れ始めていた。
しかしそんな時に自分の家名があがり、緊張から疲労は吹っ飛んだ。
「……分かった。だがあちらは俺を覚えているかもな」
「もう何年も会ってないのだろ?だがまぁ、念のため髪を染めて偽名を名乗れ。身分証をやる」
「怪しまれないか?」
「ユーク・グラウスは国に迎合しない兵を募集している。仮に気付かれたとしても逆手にとって上手くやればいい。元々目をかけてもらっていたのだろ?」
身分証を差し出されたオルディスはその紙に冷たい視線を落とした。
この身分証は帝国の市民である登録証である。
平民から貴族までみな登録証が発行されており、貴族らが私兵や使用人など集める際も、身分証さえあれば応募することが出来るのだ。
「……ディート、か……」
依頼人が用意した身分証の偽名をオルディスが読み上げた瞬間、エルディーテははっとした。
それはかつてエルディーテを救ってくれた騎士の名だったのだ。
傭兵や私兵といった立場で帝国リシアで名を上げようとしているオルディスだったが、景色が変わる度に圧力を受け追い出される。そして同じことを重ねるごとにオルディスの高潔な精神が擦り減っているように見えた。
最後に言葉を交わした時の紳士的な騎士の姿は薄れ、擦れきっており、追い出される際も揉めている姿が目立つようになる。
まるで人の転落を見せられているようで、エルディーテは喉の奥に固い石が詰まったような閉塞感を感じていた。
「――今度はこの貴族を暗殺してくれないか」
そしてついに、オルディスは一線を越えた。
大義でなく個人の利益や恨みを晴らすための依頼を受けるようになったのだ。
そういう依頼でしか食いつないでいけないのだろう。
その頃のオルディスは既にエルディーテの年齢を超えていて、瞳には輝きがなく覇気の無い声音で呟くように話し、何もかもどうでもいいといった感じだった。
相変わらずエルディーテの姿はオルディスの目に映ることは無い。
以前二回だけ話すことが出来たが、あれは奇跡だったのだろうか。
そんな風に思っていたころ、オルディスに暗殺を依頼する人物の口からエルディーテの家名が挙がった。
「グラウス家の私兵に紛れてくれないか?」
「……今度の標的はユーク・グラウス……?誰が依頼を?」
「お前が知る必要はない」
オルディスに依頼する男は仮面をつけており、彼らは夜間に取引をする。
成功報酬を渡す時に新たな命令をしてゆく依頼人の正体はエルディーテには見当もつかない。
このところオルディスの暗殺者としての一面を見せられ続けており、エルディーテ自身も少し疲れ始めていた。
しかしそんな時に自分の家名があがり、緊張から疲労は吹っ飛んだ。
「……分かった。だがあちらは俺を覚えているかもな」
「もう何年も会ってないのだろ?だがまぁ、念のため髪を染めて偽名を名乗れ。身分証をやる」
「怪しまれないか?」
「ユーク・グラウスは国に迎合しない兵を募集している。仮に気付かれたとしても逆手にとって上手くやればいい。元々目をかけてもらっていたのだろ?」
身分証を差し出されたオルディスはその紙に冷たい視線を落とした。
この身分証は帝国の市民である登録証である。
平民から貴族までみな登録証が発行されており、貴族らが私兵や使用人など集める際も、身分証さえあれば応募することが出来るのだ。
「……ディート、か……」
依頼人が用意した身分証の偽名をオルディスが読み上げた瞬間、エルディーテははっとした。
それはかつてエルディーテを救ってくれた騎士の名だったのだ。



