喪失騎士エルディーテの冥界追想録 〜 孤独な騎士の過去を辿る、運命を覆す相互救済ロマンス~

「――……なんで。どうしてですかっ!?私兵として迎え入れてもらえる約束では?」

「撤回して申し訳ない……領主様にお前を雇うなと言われたんだ。細かい理由は私からは言えない」

エルディーテの予想は当たった。
オルディスが二人の傭兵と別れた瞬間、景色がブレて世界が吹っ飛ぶようにエルディーテはまた違う場所にいた。

高そうな宿屋の一室で、オルディスは壮年の男と話していたのだ。

「ただ、私も領主様も本意ではないとは知っていて欲しい。お前は先の戦いで非常に優秀な働きを見せてくれた。ゼノアは命拾いしたと思っている。停戦に運べたのは、あちらがここを崩せなかったからだ」

上質な生地を纏う壮年の男の佇まいからして、領主の代理人といったところだろうか。

先ほどの傭兵といい、代理人らしき男といい、オルディスを認めているような口ぶりだ。しかし会話の内容は不穏で、オルディスは先ほどから怒りを露わに鋭い眼光を放っている。

とてもじゃないが、停戦協定の立役者となった人物への扱いではない事はエルディーテにも分かる。

「これは最後の報酬だ。気持ち程度だが少し色をつけてある」

「理由を教えてください……なぜ俺を雇えなくなったのですか?」

男は金貨の入った袋を差し出したがオルディスはそれを無視して訊ねた。
その頑なな様子に男は迷いの色を見せたあと、瞼を閉じて吐息を零すと声を潜めて告げる。

「……オルディス。お前は元々帝国騎士団の所属たったのだろう?言わずとも心当たりがあるのじゃないか」

その言葉にエルディーテはまさかと思った。
――レニーか?まだオルディスに嫌がらせを?

一方のオルディスは男の言葉を無言で聞き受け溜息を零した。

「今はそれぐらいしか教えてやれん……すまない。だがまだ若いんだ、他国に移って別の生き方を……」
「もういいです、世話になりました」

オルディスはひったくるように袋を受け取ると部屋を出てゆく。
エルディーテは以前より粗野な振る舞いが少し目立つオルディスを追いかけた。

そして、部屋の扉を跨いだ瞬間また景色が変わる。