喪失騎士エルディーテの冥界追想録 〜 孤独な騎士の過去を辿る、運命を覆す相互救済ロマンス~

「これ以上、問題を起こすなら勘当も視野に入れている」

スナイプ公爵の言葉はオルディスを完全に立ち止まらせた。
その表情には戸惑いと落胆の色が現れている。

しかしこればかりは仕方ない。スナイプ公爵の本音がどこにあるか、これはエルディーテの推測でしかならないが公爵の言葉はオルディスを守るためのものだ。

仮にレイヴン公爵家を敵に回した場合、オルディスとの絆は守られるが、失うものの方が多い。

極端な話、あらぬ噂による社交界からの追放や、軍事や経済的な制裁、冤罪による身分剥奪などといった様々なことが可能なのだ。

この国の歪な階級社会で生きるなら、そこまで想定する必要がある。

レニーの心ひとつで、オルディスだけでなくスナイプ家自体が咎められるのだから、今は服従の姿勢を見せることでレニーの気を静めることが何より重要だ。

それが巡り巡ってオルディスを守ることにも繋がる。
つまり、スナイプ公爵の言動は必要悪であったといえる。

エルディーテはそう考えたが、しかしスナイプ公爵は危機回避は出来てもかなり配慮に欠ける人間だった。

あの後、レニーとハンナが二人で出て行く姿を見送ることとなったのだが、彼らが去ったあとオルディスへ言葉をかけることなく出て行ってしまった。

母親の方はオルディスの肩を抱き寄せ「分かってちょうだい。あなたのためなのよ」と訴えたが、それを払ってオルディスは自室へと行ってしまう。


きっと欲しかったのは父からの言葉だ。彼もまた焦っていただろうが、息子を気に掛けるべきだった。
エルディーテは後を追いかけたが、しかしオルディスの部屋に入ることは叶わなかった。


――――オルディスの部屋の扉を開いた瞬間、また場面が変わった。