そう言いながら、書類を書き直し始める。
「……そうなんだ。あ、未来の教科書を届けてくれた時か」
「はい」
理緒は柔らかく笑った。
「未来は元気ですか?」
「あぁ。あいつ、今はパティシエを目指してレストランで修行中」
「えぇ? パティシエ!? すごい」
「実家に帰ってくるたびに愚痴ってるよ」
「それだけ一生懸命なんですね。未来のお菓子、食べてみたいな」
「あぁ、行く? レストラ……」
そこまで言って、ハッとする。
「あ……いや……」
言葉が止まる。
今、自分は何を言おうとした?
「レストランの住所、教えるよ」
「ありがとうございます。でも、急に行ったら驚かせちゃうかもしれないですね」
「あぁ……うん……」
理緒は印鑑を押し終えると、書類を差し出した。
「書き終わりました」
「ありがとう」
書類を鞄へしまう。
そしてスマホを取り出し、未来の働くレストランを検索した。
「……あの……これ、未来のレストラン」
スマホを見せる。
理緒は身を乗り出して画面を覗き込んだ。
「……都心のホテルの中のレストランなんですね。未来らしい」
「あぁ……うん……」
少し沈黙が流れる。
それから俺は、少し考えて――いや、ほとんど考えないまま口を開いた。
「あのさ、行かない? レストラン」
自分でも何を言っているのか分からなかった。
「え?」
「その……理緒を連れて行かないと、未来に怒られる気がして」
我ながら苦しい言い訳だった。
理緒はくすりと笑う。
「相変わらず、仲がいいんですね」
その笑顔に少しだけ安心した。
「仲がいいっていうか……あいつ、小悪魔を通り越して悪魔みたいに育ったんだよ」
「……あの、会社の人も一緒に行っていいですか? 小学校の同級生がいて……未来も覚えているかもしれないです」
「……もちろん」
二人きりではないことに少しだけ寂しさを覚えながらも、同時に安堵もしていた。
一瞬迷ってから切り出す。
「……じゃあ、連絡先聞いてもいい?」
「……はい」
連絡先を交換した。
「それじゃ、都合のつく日が分かったら連絡くれる?」
「はい……」
「お茶、ごちそうさまでした」
そう言って靴を履く。
「あ、そうだ。言い忘れてたんだけど、市役所の人が他の学校でも講演してほしいらしいんだ。講演費はあまり出せないみたいなんだけど……」
「え……はい。私でお役に立てるなら。でも、社長に確認しておきますね」
「分かった。確認しておいて。また校長先生から連絡が行くと思う」
「分かりました」
「うん。じゃあ、また」
「はい。また」
そうして俺はマンションを後にした。
「……そうなんだ。あ、未来の教科書を届けてくれた時か」
「はい」
理緒は柔らかく笑った。
「未来は元気ですか?」
「あぁ。あいつ、今はパティシエを目指してレストランで修行中」
「えぇ? パティシエ!? すごい」
「実家に帰ってくるたびに愚痴ってるよ」
「それだけ一生懸命なんですね。未来のお菓子、食べてみたいな」
「あぁ、行く? レストラ……」
そこまで言って、ハッとする。
「あ……いや……」
言葉が止まる。
今、自分は何を言おうとした?
「レストランの住所、教えるよ」
「ありがとうございます。でも、急に行ったら驚かせちゃうかもしれないですね」
「あぁ……うん……」
理緒は印鑑を押し終えると、書類を差し出した。
「書き終わりました」
「ありがとう」
書類を鞄へしまう。
そしてスマホを取り出し、未来の働くレストランを検索した。
「……あの……これ、未来のレストラン」
スマホを見せる。
理緒は身を乗り出して画面を覗き込んだ。
「……都心のホテルの中のレストランなんですね。未来らしい」
「あぁ……うん……」
少し沈黙が流れる。
それから俺は、少し考えて――いや、ほとんど考えないまま口を開いた。
「あのさ、行かない? レストラン」
自分でも何を言っているのか分からなかった。
「え?」
「その……理緒を連れて行かないと、未来に怒られる気がして」
我ながら苦しい言い訳だった。
理緒はくすりと笑う。
「相変わらず、仲がいいんですね」
その笑顔に少しだけ安心した。
「仲がいいっていうか……あいつ、小悪魔を通り越して悪魔みたいに育ったんだよ」
「……あの、会社の人も一緒に行っていいですか? 小学校の同級生がいて……未来も覚えているかもしれないです」
「……もちろん」
二人きりではないことに少しだけ寂しさを覚えながらも、同時に安堵もしていた。
一瞬迷ってから切り出す。
「……じゃあ、連絡先聞いてもいい?」
「……はい」
連絡先を交換した。
「それじゃ、都合のつく日が分かったら連絡くれる?」
「はい……」
「お茶、ごちそうさまでした」
そう言って靴を履く。
「あ、そうだ。言い忘れてたんだけど、市役所の人が他の学校でも講演してほしいらしいんだ。講演費はあまり出せないみたいなんだけど……」
「え……はい。私でお役に立てるなら。でも、社長に確認しておきますね」
「分かった。確認しておいて。また校長先生から連絡が行くと思う」
「分かりました」
「うん。じゃあ、また」
「はい。また」
そうして俺はマンションを後にした。



