登山の帰りに雨が降り、僕はある廃洋館で雨宿りした。 奥の部屋を覗くと、月明かりの中、白い女が立っていた。 「あのう」 僕の声に、彼女が振り返った。 「待って、いたのよ」 彼女は式の直前、婚約者に裏切られ、この洋館の窓から身を投げたのだという。 「私を、ここから連れ出して」 僕は震える手で、彼女の手を握った。 「いいよ」 「ああ、うれしい」 その声とともに、彼女が消えた。