その手を、もう離さない


待ってるのが嫌だった。

つまり。

早く会いたかったということだ。

そんなことを当たり前みたいに言われると困る。

本当に困る。

自分はまだ慣れていないのだ。

こういう言葉に。

こういう幸せに。

けれど翡翠は気付いていないらしい。

無邪気な顔で美都の隣へ座る。

「あとどれくらい?」

ノートを覗き込みながら聞いてくる。

距離が近い。

近すぎる。

シャンプーの香りがした。

心臓がうるさい。

本人は絶対分かっていない。