その手を、もう離さない


その日の放課後。

美都は珍しく居残りをしていた。

来週提出のレポートが終わらないのだ。

授業中に進めていたつもりだったが、思った以上に量が多かった。

教室には数人しか残っていない。

窓の外は少しずつ夕暮れに染まり始めている。

ペンを走らせながら、美都は小さく息を吐いた。

面倒だ。

正直帰りたい。

けれど終わらせないと後がもっと面倒になる。

そんなことを考えながらノートへ視線を落とした時だった。

スマホが震える。

画面を見る。

翡翠だった。

『まだ帰ってない?』

短いメッセージ。

それだけなのに、少しだけ頬が緩む。

本当に単純だと思う。