その手を、もう離さない


たぶん自分は、思っている以上に翡翠に心を許している。

そんなことを考えた瞬間、美都は小さく眉を寄せた。

認めたくないわけじゃない。

むしろ事実だと思う。

けれど、少し悔しいのだ。

昔の自分なら考えられなかった。

誰か一人の言葉で気分が変わることも。

会える時間を楽しみにすることも。

相手の表情一つで安心したり不安になったりすることも。

全部。

自分とは無縁だと思っていた。

なのに今は違う。

翡翠が笑えば嬉しい。

少し元気がなさそうだと気になる。

会えない日は物足りない。

気付けば生活の中に翡翠がいる。

それが当たり前になっている。

そんな自分に気付くたび、美都は少しだけ困ってしまうのだった。