その手を、もう離さない


窓の外では風が吹いていた。

校庭から聞こえる声も遠い。

二人の間には静かな時間が流れている。

昔の美都なら耐えられなかったかもしれない。

沈黙が苦手だった。

何を考えているのか探られる気がして。

勝手に踏み込まれる気がして。

だから距離を取っていた。

けれど今は違う。

翡翠との沈黙は嫌じゃない。

話さなくても落ち着く。

隣にいるだけで安心する。

そんな相手がいることが、少しだけ嬉しかった。

そして同時に思う。

たぶん自分は。

思っている以上に翡翠に心を許しているのだと。