その手を、もう離さない


窓の外では風が吹いていた。

昼休みのざわめきが遠くから聞こえる。

けれど踊り場だけは静かだった。

二人きりの空間。

付き合う前から何度も過ごしてきた場所。

それなのに最近は妙に落ち着かない。

翡翠が近いからだ。

肩が触れそうな距離。

少し手を伸ばせば届いてしまう距離。

そんなことばかり意識してしまう。

昔は平気だった。

隣に座っても。

目が合っても。

こんな風にはならなかった。

けれど今は違う。

恋人になった。

たったそれだけのことが、想像以上に大きかった。