その手を、もう離さない


雨の日ルールの翌日。

神城美都は、自分でも少し困っていた。

昨日からずっと、ある感覚が頭から離れないのだ。

翡翠の手だった。

雨の日ルール自体は特別なものではない。付き合う前から何度も繰り返してきたことだし、今さら意識するようなものでもないはずだった。

雨が降ると翡翠が手を差し出す。そして何も言わず握る。それだけの約束だ。

けれど昨日は違った。

繋いだ瞬間の温もりも、指先に伝わる感触も、全部が妙に鮮明だったのだ。

それどころか、離れる時に少しだけ物足りないと感じてしまった自分がいる。

そこまで考えて、美都は机に突っ伏した。

重症だな、と本気で思う。

付き合う前から好きだった。

好きだから一緒にいたかった。

けれど恋人になってからは、それとは違う感情が増えている気がする。

会いたい。

話したい。

隣にいたい。

そして最近は、それだけでは足りなくなってきた。

触れたい。

そんなことを考える自分がいる。