その手を、もう離さない


学校へ向かう途中も雨は止まなかった。

傘を叩く雨音。

濡れたアスファルト。

行き交う車の水しぶき。

見慣れた景色なのに、雨の日は少しだけ世界が遠く感じる。

そんなことを考えていると、ポケットのスマホが震えた。

取り出す。

画面を見る。

そこには翡翠の名前が表示されていた。

『雨だね』

短いメッセージ。

本当にそれだけ。

なのに。

胸の奥の重さが少しだけ軽くなる。

自分でも単純だと思う。

たった一通のメッセージで安心するなんて。