その手を、もう離さない


翌朝。

目を覚ました瞬間、美都は小さく眉を寄せた。

窓を叩く雨音が聞こえたからだ。

激しい雨ではない。

けれど静かに降り続いている。

カーテンの隙間から見える空は灰色だった。

昔ほどではない。

もう雨が降っただけで息が苦しくなることもないし、眠れなくなることも減った。

それでも。

雨の日だけは少し違う。

胸の奥がざわつく。

理由の分からない不安が顔を出す。

身体が覚えているのだ。

忘れたくても忘れられない記憶を。

だから雨の日は嫌いだった。

少なくとも。

翡翠と出会うまでは。