その手を、もう離さない


「美都」

呼ばれる。

その名前に未だに慣れない。

初めて呼ばれた日のことを思い出す。

あの日もこんな風に胸が騒いだ。

今でも変わらない。

むしろ少しずつ破壊力が増している気さえする。

翡翠は何でもない顔で呼ぶのだ。

けれど呼ばれる側はたまったものじゃない。

名前一つで心臓が跳ねる。

こんなこと本人には絶対言えない。

知られたら間違いなく笑われる。

だから美都は平静を装いながら隣へ腰を下ろした。