その手を、もう離さない


昼休みのチャイムが鳴る。

その瞬間、美都は小さく息を吐いた。

周囲では椅子を引く音や話し声が響いている。

友達同士で昼食へ向かう生徒。

購買へ走る生徒。

いつも通りの光景だった。

けれど美都の足は自然と踊り場へ向かっていた。

もう習慣になっている。

翡翠と出会ってから。

昼休みになると、あの場所へ行く。

誰かに言われたわけじゃない。

約束したわけでもない。

それなのに当たり前になっていた。

もし今日、翡翠が来なかったら。

そんなことを考えて、少しだけ眉を寄せる。

きっと落ち着かない。

何かが足りない気がするはずだ。

そう思った瞬間、自分で驚く。

いつの間にこんな存在になったんだろう。