その手を、もう離さない


恋人になって五日。

神城美都は最近、自分でも少し困っていた。

以前と変わらない毎日を過ごしているはずなのに、心だけが妙に落ち着かないのだ。

朝起きて学校へ行く。

授業を受ける。

友達と話す。

そんな日常は何一つ変わっていない。

けれど、そのどこかに必ず翡翠がいる。

気付けば考えている。

今何をしているだろう。

ちゃんと笑っているだろうか。

昼休みはもうすぐだろうか。

そんなことばかりだった。

我ながら重症だと思う。

好きな人ができるというのは、こんなにも厄介なものなのか。

いや。

好きな人じゃない。

恋人だ。

その言葉を思い浮かべた瞬間、胸の奥が少しだけ熱くなる。

未だに慣れない。

付き合って五日も経ったのに。

むしろ日が経つほど実感してしまう。

橘翡翠は、自分の恋人なのだと。