その手を、もう離さない


その時だった。

翡翠の手が少しだけ揺れる。

ほんの数センチ。

触れそうで。

触れない距離。

美都は視線を落とす。

そして。

誰にも気付かれないくらい小さく。

本当に小さく。

指先を近付けた。

触れなかった。

でも。

それだけで十分だった。

今はまだ。

この距離を楽しみたいと思ったから。