その手を、もう離さない


夕方の風が吹く。

髪が揺れる。

翡翠は少し恥ずかしそうに笑っていた。

その表情を見ていると、胸の奥のざわつきが不思議と消えていく。

友達と話している姿を見て感じたあの感情も。

待っている間の落ち着かなさも。

全部。

好きだからだった。

そして。

自分だけじゃなかった。

その事実がどうしようもなく嬉しい。

気付けば美都は小さく笑っていた。

本当に少しだけ。

けれど翡翠は目を丸くする。

その笑顔が珍しかったからだ。

「……何だ」

照れ隠しみたいにそう言うと、翡翠は嬉しそうに首を振った。

その笑顔を見ながら、美都は思う。

恋人になるって、案外悪くないのかもしれない。