その手を、もう離さない


「ねぇ、美都」

不意に呼ばれて顔を上げる。

名前で呼ばれることにも少しずつ慣れてきた。

いや。

慣れたわけじゃない。

慣れたいと思うようになったのかもしれない。

翡翠は少しだけ笑っていた。

楽しそうでもあり。

どこか照れているようでもある。

「私ね」

そう言って言葉を区切る。

夕陽がその横顔を照らしていた。

「ちょっと嬉しかった」

その言葉に美都は足を止めそうになった。