その手を、もう離さない


一瞬、本当に時間が止まった気がした。

窓の外から聞こえる声も。

吹き込む風も。

全部遠くなる。

何を言われたのか理解するまで数秒かかった。

好きなの。

そんなの当たり前だ。

恋人なのだから。

けれど問題はそこじゃない。

その言い方だ。

まるで。

好きが隠せていないと言われたみたいで。

「……当たり前だろ」

ようやくそう返す。

声は思ったより掠れていた。

翡翠は目を丸くする。

そして次の瞬間。

耳まで真っ赤になった。