その手を、もう離さない


階段を上りながら、美都は小さく息を吐いた。

最近、本当におかしい。

翡翠といる時間が好きだ。

それは認める。

会えると嬉しい。

それも認める。

けれど、それを周りに気付かれるのは話が別だった。

妙に恥ずかしい。

隠しているつもりはない。

けれど見抜かれるのも違う。

そんな面倒な感情を抱えながら踊り場の扉を開く。

すると。

「美都」

聞き慣れた声がした。

それだけで。

本当にそれだけで。

さっきまでの落ち着かなさが少し消える。

自分でも笑いたくなった。

単純すぎる。

けれど、その声を聞いて安心してしまうのだから仕方ない。