その手を、もう離さない


窓から吹き込む風がページを揺らした。

翡翠は本を閉じる。

そして少しだけ身体を寄せてきた。

肩が触れる。

ほんの一瞬。

それだけだった。

けれど不思議と離れようとは思わなかった。

むしろその温もりに安心している自分がいた。

翡翠は気付いているのだろうか。

みんなの前では相変わらず無愛想で。

素っ気なくて。

何も変わっていないように見える自分が。

こうして二人きりになると、少しずつ甘くなっていることを。

たぶん気付いている。

だからこそ何も言わないのだろう。

そんな優しさに甘えながら、美都は小さく目を細めた。

そして心の中で認める。

――たぶん俺は、翡翠にだけ弱い。