その手を、もう離さない


「気のせいだろ」

そう返す。

けれど翡翠は首を横に振った。

「違うよ」

その否定には妙な自信があった。

まるで絶対に間違っていないと言わんばかりに。

「前はね」

そう言いながら少し考える。

記憶を探しているのだろう。

「もっと怖かった」

その言葉に美都は顔をしかめた。

怖かった。

それは少し傷付く。

いや、実際そうだったのかもしれない。

人を寄せ付けないようにしていた自覚はある。

話しかけるなという空気も出していたと思う。

だから否定はできなかった。

「でも今は違う」

翡翠はそう言って笑う。

柔らかな笑顔だった。

その顔を見ていると、不思議と反論する気がなくなる。