その手を、もう離さない


昼休みのチャイムが鳴った瞬間、美都は立ち上がった。

それはもう無意識に近かった。

購買へ向かうわけでもない。友達と昼食を取る約束があるわけでもない。それなのに身体が勝手に動く。

向かう先は決まっていた。

踊り場。

そして翡翠のいる場所。

以前なら考えられなかっただろう。昼休みを誰かと過ごすことが当たり前になるなんて。

誰かに会うために時間を気にするなんて。そんな自分を見たら、少し前の自分はきっと信じない。

階段を上りながら、美都はふと苦笑した。

本当に変わったと思う。

少なくとも翡翠と出会う前の自分とは違う。

けれど不思議と嫌ではなかった。

むしろ、この変化を心地良いと思っている自分がいる。