その手を、もう離さない


「……嫌じゃない」

ようやく出た言葉は、それだけだった。

もっと他に言い方はあったと思う。

嬉しいとか。

呼んでほしいとか。

本当はそういうことを言うべきなんだろう。

でも無理だった。

恥ずかしすぎる。

精一杯だった。

けれど、その一言だけで十分だったらしい。

翡翠の表情がぱっと明るくなる。

春の日差しみたいな笑顔だった。